パスクア(復活祭) とはどんな祝日か イタリアの場合

昨日はキリスト教の復活祭でした。この機会にどんな祭日なのかポイントを簡単にまとめておきます。

1. パスクア Pasqua

復活祭、イタリア語でいうパスクアはキリスト教にとって最も大切な祝日である。キリスト教ではイエス・キリストは死後の三日目に復活したと信じられており、その重要性はキリストの誕生をも上回る。したがってクリスマス(Natale)よりもパスクアの方が重要視されている(1)。

2. 復活 Risurrezione

イエスは、「神の子」「イスラエルの王」を自称してむごたらしく処刑された。その教団は教祖の死により霧散しても不思議ではなかったが、実際には弟子たちにより布教が続けられた。そのとき弟子たちが使ったレトリックの一つが「復活」であり、イエスは一預言者ではなく「神の子」であり「救世主=キリスト」であるという主張に説得力を持たせるために非常に重要であった(コリントI, 15参照)。

宗派を問わず「復活」はキリスト教の鍵概念のひとつであり、キリストの復活を信じない者はキリスト教徒とは呼べないといってもよいほどである(1)。

3. 過越の祭りとの関連性

イタリア語のパスクアの語源はユダヤの「過越の祭り」Pesachである。「過越の祭り」はユダヤ人がモーセに率いられてエジプトから脱出するとき、神がエジプト中の長子を殺したが、モーセの指示で小羊の血を家の入口に塗った家は過ぎ越したという伝説に由来するユダヤの祭り。ユダヤ暦のニサン月14日の夜に始まる(「旧約聖書」民数記9・2-3)。

聖書によればキリストの処刑された日は「過越の備え日」だった(ヨハネ19・14)。「備え日」とは前日のことでニサン月13日。次の14日が過越で安息日(ヨハネ19・31)。そして安息日の次の日、すなわち週の初めの日に、マグダラのマリア(Maria Maddalena)が墓に向かうと墓石が外されていることを発見する(ヨハネ20・1)。マリアが墓の外で泣いていると何者かに話しかけられ、振り返ると復活したイエスが立っていた(同)。

ユダヤの安息日は土曜日なので、キリストが処刑された日は13日の金曜日、復活したのは日曜日となる。

以上のようにイタリア語の「パスクア」は確かにユダヤの「過越」に由来するものの、それはキリストが磔にされた日が過越の備え日だったからに過ぎず、祭りの趣旨は全くことなっている。

 

4. パスクアは移動祝日

イエスの復活はユダヤの「過越」をまたいでいるので、初期キリスト教において、とくに東方では過越と同じ日(曜日にかかわらずニサン月14日)に復活祭を行うのが一般的だった。325年の第1回ニカイア公会議で、場所により復活祭の日が異なる状況が改められ、春分のあとの最初の満月のあとの最初の日曜日をパスクアとすることが定められた(2)。

東方教会はユリウス暦、西方教会はグレゴリオ暦に基づくためパスクアの日が異なる(4)。2019年から2030年までのカトリック教会のパスクアは以下の通り(3)。移動の幅は3月22日から4月25日までの間となる(2)。

2019年  4月21日
2020年  4月12日
2021年  4月4日
2022年  4月17日
2023年  4月9日
2024年  3月31日
2025年  4月20日
2026年  4月5日
2027年  3月28日
2028年  4月16日
2029年  4月1日
2030年  4月21日

毎年大きく移動するので、「去年は確か4月中旬だったから今年もたぶん」みたいな発想はまったく通用しない。

5. 聖週間とパスクエッタ

パスクア直前の日曜日から前日の土曜日までの1週間は聖週間 Settimana santa と呼ばれる。また、イタリアではパスクアの翌日は国民の祝日(パスクエッタ)とされており、家族や親戚が集まって過ごすのが一般的。

日曜日 枝の祝日 Domenica delle palme (エルサレム入城の日)
木曜日から土曜日まで 聖なる三日間 Triduo sacro
日曜日 主の復活の日 Pasqua
月曜日 天使の月曜日 Lunedì dell’Angelo (Pasquetta)

6. ペンテコステと聖体の祝日

イエスは復活後、40日間弟子たちの前に現れて神の国について語り、昇天した(使徒1)。そして、五旬節(過越から50日後に行うユダヤの祭り)の日にみなが集まっていると、こんどは精霊が降ってきた。この聖霊の働きでガラリア人であるはずの弟子たちが諸外国の言葉を話し始めた。五旬節のためにエルサレムにやってきていた外国のユダヤ人たちはそれを見て驚いた(使徒2)。

ユダヤの五旬節の日に起きたこの「聖霊降臨」を、カトリック教会は、パスクアから50日後、7回目の日曜日に祝う(ペンテコステ, Domenica di Pentecoste)。ペンテコステという言葉は50日を意味するギリシャ語に由来する。この祭日もパスクアに連動して移動する。2019年の場合、6月9日がペンテコステだ。

パスクアから60日後、ペンテコステの日曜日の次の日曜日のあとの木曜日は「聖体の祝日」(Corpus Domini)とされる。ただし、この祝日の場合、木曜日ではなく、そのあとの日曜日とする地方もある。

7. タマゴとハト

パスクアが近づくとイタリアのスーパーマーケットではタマゴの形をしたチョコレートが山積みされる。パスクアのタマゴ(Uovo di Pasqua)と呼ばれるお菓子だ。中身は空洞なので、大きなタマゴでも軽い。割って食べると中からおまけが出てくるものもある。なぜタマゴなのかは諸説ある。キリストの復活とタマゴをかけたとか、東方ではカーニバル後からパスクアまでの期間、肉だけでなくタマゴも食べることが禁止されたので、余ったタマゴを固くゆでキリスト教のシンボルを描いて飾ったことの名残りだとか(1)。

タマゴ形のチョコレートは、英国のCadburyが1875年に発売したのが最初らしい(1)。

また、同じ時期、パスクアのハト(Colomba pasquale)と呼ばれる鳩の形をしたパネットーネも大量に出回る。これはロンバルディア地方のお菓子とされる。現在販売されているパネットーネと全く同じ味のお菓子は、製菓会社のモッタが1930年代にロンバルディア地方に伝わるレシピをベースに開発した(7)。クリスマスのパネットーネと同様に、すっかり根付いている。

Colomba con gocce di cioccolato con il Bimby

 

以上、パスクアについて思いついた点をまとめてみました。

 

(関連記事)  Tempo di Natale 降誕節

 

参考ページ:
(1) https://www.ilpost.it/2018/04/01/pasqua-uova-data-storia/
(2) http://www.treccani.it/enciclopedia/pasqua/
(3) https://www.marcopolo.tv/quando-e-pasqua
(4) https://www.pianetadonna.it/notizie/attualita/quando-e-pasqua-data.html
(5) カトリック中央協議会 過越の聖なる三日間
(6) カトリック中央協議会 復活節
(7) https://www.mottamilano.it/myth/colomba

 

Nobuhisa Kajiyama

イタリアニスタ。イタリア語翻訳の日伊サービス代表責任者。インテリスタ、カープ男子、オペラファン、写真好き、天文学初心者。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です