今回はイタリア語を学習する上で欠かせないイタリア語の辞書について。
目次
1.紙のイタリア語辞書の選択肢と選び方
2.電子辞書の選択肢と選び方
3.スマフォアプリについて
1.紙のイタリア辞書の選択肢と選び方
イタリア語の学習を始める人が最初に購入する図書のひとつはイタリア語の辞典、とくにイタリア語を探して日本語訳を見る「伊和辞典」だと思います。定番は言うまでもなく小学館版ですが、他にも出ているので列挙してみます。
①小学館「伊和中辞典」
1983年に初版が、1999年に第2版が発行されたイタリア語学習者にとって定番となっている辞書です。見出し語7万5千、用例9万とあります。
辞書の大きさ・厚みが高校時代に使用する英和中辞典と同じぐらいなので手になじみやすいのもポイント。CASIOの電子辞書でもこの辞書が採用されています。内容がしっかりしている分ずしりと重みもあります。表紙の色は緑。
伊和中辞典
池田 廉 小学館 1999-02-01
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②小学館「和伊中辞典」
日本語からイタリア語を引く「和伊」辞典の定番はこれになります。上の「伊和中辞典」の相棒のようなもので大きさもほとんど変わりません。表紙の色が赤なので「伊和」とペアでもちたくなります。収録語数5万3千、会話や作文に役立つイタリア語用例8万。2008年に第2版が出版されました。
小学館 和伊中辞典 第2版
西川 一郎,和田 忠彦 小学館 2008-03-01
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③小学館「ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典」
小学館からは2001年に伊和と和伊の両方を収録した小辞典「ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典」(伊和4万5千+和伊2万項目収録)も出版されています。旅行の場合これがお勧めです。あとで紹介する電子辞書は旅行中に知りたくなったことをその場でチェックできるなどそれなりに便利な一方で、盗難・紛失したときのダメージが大きいというリスクがあります。
2008年には装丁に人気キャラを使った「ハローキティ版」も登場。キティちゃんはイタリアでも大人気なので友達作りのアイテムとしても使えるかも知れません。
ポケットプログレッシブ 伊和・和伊辞典 ハローキティ版
郡 史郎 小学館 2008-12-13
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④三省堂「デイリーコンサイス伊和・和伊辞典」
三省堂は2013年に待望の小辞書「デイリーコンサイス伊和・和伊辞典」(総項目数10万3千。伊和は8万(うち見出し6万2 千、用例・成句1万8千)、和伊は2万3千(うち見出し1万8千、用例5千))を出版しました。「ポケットプログレッシブ」と同じ小型のB7変型判に加え、一回り大きいB6変型判も発売。辞書は新しいにこしたことはないので、ハンディー判辞書の購入をお考えの方にとっては検討の価値がありそうです。
デイリーコンサイス伊和・和伊辞典
藤村 昌昭 三省堂 2013-03-01
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⑤白水社「プリーモ伊和辞典 和伊付」
「新伊和辞典」(初版1964年)の出版元である白水社から、ついに新版のイタリア語辞典「プリーモ伊和辞典 和伊付」(2011年)が出版されました。イタリア語界隈では高名な高田和文氏と白崎容子氏が編集。紹介文には「全見出しカナ発音付。ランク別2色刷、精選3万3千語。充実した和伊語彙集8千語。パスタ、サッカーなど図版多数」とあります。
残念ながら、自分はまだこの辞書を実際に手にしたことがありません。名前が「il Primo(最初の)」ですし、語彙数は小学館「伊和中辞典」の半数にも満たないので、初級辞書という位置付けだと思われます。イタリアの中学生が最初に手にする辞書の名前がよく「il Primo Dizionario」だったりします。
プリーモ伊和辞典 和伊付《シングルCD付》
秋山 余思 白水社 2011-04-02
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初級辞書の難しいところは、語彙数がまるで足らないところです。第二外国語の学習者はたいてい大人なので、文法が初歩の段階から現地の新聞など読みたくなります。そのときに載っていない単語が多すぎるのです。この辞書がそうなのかわかりませんが。
とりあえず辞書は「中辞典」にしておいて、辞書とは別に手軽な「単語集」を活用して語彙を増やすのがよいかもしれません。オススメは「プログレッシブ単語帳 日本語から引く知っておきたいイタリア語」(絶版?)です。
プログレッシブ単語帳 日本語から引く知っておきたいイタリア語
白崎 容子 小学館 2002-04
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2.電子辞書の選択肢と選び方
次にイタリア語の電子辞書の種類と選び方について。といっても、電子辞書の場合も選択肢はかなり限られています。
2003年に業界初のイタリア語モデルを発売したSIIが2015年に電子辞書事業から撤退して以来、イタリア語重視で電子辞書を選ぶ場合、カシオ以外の選択肢はなくなってしまいました。小学館「伊和中辞典」を収録している機種が他社に存在しないからです(2018年9月現在)。
ちなみにシャープの場合、イタリア語辞書が最初から収録された機種はないので、イタリア語辞書を別途購入してプラスするしかありません。追加に使う「イタリア語コンテンツカード」に収録されている図書は以下の三つです。
●デイリー日伊英・伊日英辞典
三省堂 収録項目 日伊英 約15,000項目/伊日英 約9,000項目●イタリア語会話 とっさのひとこと辞典
DHC 収録文例 約7,000文例●ブルーガイドわがまま歩き旅行会話 イタリア語+英語
実業之日本社 収録例文 約2,500例/収録単語 約8,500語
この三つだけではさすがに本格的なイタリア語学習は無理です。
①カシオ電子辞書イタリア語モデル XD-Z7400
そこでカシオです。カシオは長年、小学館「伊和中辞典」と「和伊中辞典」の両方が最初から収録されている「イタリア語モデル」を提供しています。最新機種の2018年モデルはXD-Z7400です。この機種には以下のイタリア語関連コンテンツが収録されています。
●伊和中辞典(第2版)(収録数:約75,000語)
●和伊中辞典(収録数:約40,000語)
●オックスフォードイタリア語辞典(収録数:約300,000語)
●口が覚えるイタリア語(収録数:520例文)
●文法中心 ゼロから始めるイタリア語(収録数:全33課)
●ひとり歩きの会話集 イタリア語(収録数:約2,200例文)
●Dr. PASSPORT 日本語→イタリア語版(収録数:約350項目)
買ったその日からイタリア語に熱中できそうなわくわくするコンテンツ構成です。
唯一残念な点は収録されている「和伊中辞典」が2008年発売の第2版ではなく1993年の初版のままな点です。いつ更新されるのだろうとずっと注視しているのですが、やる気がないのか、それとも謎の力が働いているのか、いまだに旧版のままです。
②カシオ電子辞書イタリア語モデルの中古品
イタリア語モデルの電子辞書も発売されてから長いのでアマゾンやヤフオクなどではかなりの数の中古品が出回っています。電子辞書の新品は高いので、とりあえず中古品で間に合わせるという選択肢もあります。
ご興味ある方は一度アマゾンで検索してみてください。
ただし、中古品の場合は保証がない場合がほとんどです。前に使った人がどんな使い方をしたかは全然わからないので、最初はよかったのに使い続けるとすぐにおかしくなるという可能性もないとは言い切れません。
③カシオ電子辞典のイタリア語モデル以外の機種
イタリア語モデル以外の電子辞書にあとからイタリア語辞書を追加するという選択もあります。イタリア語の「追加コンテンツ」にはCD-ROM版とmicroSDカード版があり、どちらもにも小学館の「伊和中辞典」「和伊中辞典」が収録されています。microSDカード版にはさらに「ゼロから始めるイタリア語」が含まれます。
microSDカード版は電子辞書本体に差し込めばすぐに使えます。一方、CD-ROM版はいったんパソコンに辞書をインストールし、次にパソコンから電子辞書本体に辞書をインストールするのでパソコンが必要になります。
どちらの場合も、電子辞書本体が辞書の追加に対応したタイプである必要があります。カシオは辞書の追加機能を搭載していないタイプの電子辞書も販売しているので注意が必要です。
自分は、CD-ROM版でイタリア語辞典を追加した総合モデルを使用しています。イタリア語モデルに収録されない「200万語専門用語 英和・和英大辞典」をよく使うからです。
伊和辞典は「お気に入り」+Iキーで呼び出すように設定しています。7年間酷使したせいか最近Iキーの調子が悪いのでそろそろ買い換えかなと思って最新機種を調べたところ、なんとキーボードからその「お気に入り」キーと、多用している「複数アルファベット」キーがどちらも消えていました。
これがきっかけでスマフォへの移行が現実的か調べてみました。
3.スマフォアプリについて
①物書堂「伊和・和伊中辞典」
ご存じのようにスマフォのOSにはアップルのiOSとグーグルのAndroidがあります。物書堂というiOSのアプリ開発を手がけている会社から、小学館の「伊和中辞典 第2版」と「和伊中辞典 第2版」を収録したアプリが発売されています。
商品紹介ページ ⇒ https://www.monokakido.jp/foreign/italiano/
このアプリの最大の特徴は、和伊中辞典が第2版である点です。どういう事情でそれが可能になったのかわかりませんが、10年以上イタリア語モデルを作り続けているカシオの電子辞書にいまだに収録されないものがiOSでアプリ化されています。
同社はiOS用のアプリしか開発しないので、残念ながらAndroid版はありません。他社からも商品化されていないので、Androidでは今のところ小学館の辞書が使えるアプリはありません。
しかし、Androidで小学館の辞書を使う方法がひとつだけあります。
②ジャパンナレッジ
オンラインで様々な辞書を閲覧できるサービス「ジャパンナレッジ」で小学館の「伊和中辞典 第2版」と「和伊中辞典 第2版」が閲覧できます。
ジャパンナレッジホームページ ⇒ https://japanknowledge.com/
料金は以下のようになります(参照先)。
小学館の「伊和」「和伊」を閲覧するためには「JKパーソナル+R」を選ばないといけないので、個人の月会費は2,160円になります。入会すれば「日本国語大辞典(第二版)」や「日本大百科全書」などの数多くの良質な辞典を閲覧することができます。
スマフォから閲覧するためには、ブラウザアプリを使ってジャパンナレッジのサービスにアクセスします(推奨アプリはiOSがSafari 10、AndroidがGoogle Chrome最新版)。ジャパンナレッジ閲覧用のアプリはいまのところ出ていないようです。
③その他の辞書アプリ
ここまでに触れなかった「伊伊辞典」「伊英・英伊辞典」もイタリア語学習では有用です。自分はZanichelli社とのTreccani社の辞書を使っています。
Zanichelli 伊伊辞典 2019年版 Android ⇒ Google Play
Zanichelli 伊英・英伊辞典 2019年版 Android ⇒ Google Play
Treccani Vocabolario 2015 Android ⇒ Google Play
どちらも信頼できる出版社のものですし、インタフェースもほどほどに使いやすいので間違いないと思います。
カシオのイタリア語モデルに収録されている「Oxford Italian Dictionary」(Google Play)のアプリ版もあります。これは正直、あまり使いやすくありません。
イタリアの出版社Hoepliから初心者用の「伊和・和伊辞典」(Google Play)
がひとつ発売されています。内容はかなり薄めです。
④無料の辞書アプリについて
Google Playでは様々な無料辞書アプリも手に入ります。手軽に利用できる「翻訳アプリ」もとても便利です。とはいえ、信頼できる出版元の辞書アプリは当然ながら無料では手に入りません。本気のイタリア語学習者が無料辞書アプリを半信半疑で使うのは時間の無駄でしょう。
まとめ
以上、紙の辞書、電子辞書、スマフォアプリに分けてイタリア語辞書の選択肢と選び方について述べました。実際には選択肢は限られていて、結局、小学館の「伊和中辞典」「和伊中辞典」がメインになります。
どちらも「第2版」を使うのがベストです。
その意味で、「伊和・和伊中辞典 第2版」アプリが利用できるiOSユーザーならば、「和伊」が初版のままのカシオ電子辞書から移行するメリットがあります。残念ながらAndroidユーザーには、現状そういう選択肢がありません。
紙の辞書にも「和伊」が第2版であるというアドバンテージがあります。
すでにカシオの電子辞書をもっている場合、CD-ROM版でイタリア語辞書をプラスするのが一番コスパがよさそうです。ただし、CD-ROMに含まれている「和伊」は初版のものです。(了)
※情報は執筆当時のものです。